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それから
それから
線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁
手も顫える、足も顫える。声の顫える事や、心臓の飛び上がる事は始終ある。けれども、激する事は近来殆んどない。激すると云う心的状態は、死に近づき得る自然の階段で、激するたびに死に易くなるのは眼に見えているから、時には好奇心で、せめて、その近所まで押し寄せてみたいと思う事もあるが、全く駄目である。代助はこの頃の自己を解剖するたびに、五六年前の自己と、まるで違っているのに驚ろかずにはいられなかった。
代助は机の上の書物を伏せると立ち上がった。縁側の硝子戸を細目に開けた間から暖かい陽気な風が吹き込んで来た。そうして鉢植のアマランスの赤い弁をふらふらと揺かした。日は大きな花の上に落ちている。代助は曲んで、花の中を覗き込んだ。やがて、ひょろ長い雄蕊の頂きから、花粉を取って、雌蕊の先へ持って来て、丹念に塗り付けた。
「蟻でも付きましたか」と門野が玄関の方から出て来た。袴を穿いている。代助は曲んだまま顔を上げた。
「もう行って来たの」
「ええ、行って来ました。何だそうです。明日御引移りになるそうです。今日これから上がろうと思ってた所だと仰しゃいました」
「誰が? 平岡が?」