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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

すると、その瞬間に眼が冴えてしまう。しばらくして、又眠りかけると、又、そら此所だと思う。代助は殆んど毎晩の様にこの好奇心に苦しめられて、同じ事を二遍も三遍も繰り返した。仕舞には自分ながら辟易した。どうかして、この苦痛を逃れようと思った。のみならず、つくづく自分は愚物であると考えた。自分の不明瞭な意識を、自分の明瞭な意識に訴えて、同時に回顧しようとするのは、ジェームスの云った通り、暗闇を検査する為に蝋燭を点したり、独楽の運動を吟味する為に独楽を抑える様なもので、生涯寐られっこない訳になる。と解っているが晩になると又はっと思う。

この困難は約一年ばかりで何時の間にか漸く遠退いた。代助は昨夕の夢とこの困難とを比較してみて、妙に感じた。正気の自己の一部分を切り放して、そのままの姿として、知らぬ間に夢の中へ譲り渡す方が趣があると思ったからである。同時に、この作用は気狂になる時の状態と似ていはせぬかと考え付いた。代助は今まで、自分は激昂しないから気狂にはなれないと信じていたのである。

それから二三日は、代助も門野も平岡の消息を聞かずに過ごした。四日目の午過に代助は麻布のある家へ園遊会に呼ばれて行った。