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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

ああ賞められると、天気の方でも是非好くならなくっちゃならなくなる」

「そんなに天気を賞めていたのかい。へえ。少し暑過ぎるじゃないか」

「私にも暑過ぎる」

誠吾と代助は申し合せた様に、白い手巾を出して額を拭いた。両人共重い絹帽を被っている。

兄弟は芝生の外れの木蔭まで来て留った。近所には誰もいない。向うの方で余興か何か始まっている。それを、誠吾は、宅にいると同じ様な顔をして、遠くから眺めた。

「兄の様になると、宅にいても、客に来ても同じ心持ちなんだろう。こう世の中に慣れ切ってしまっても、楽しみがなくって、つまらないものだろう」と思いながら代助は誠吾の様子を見ていた。

「今日は御父さんはどうしました」

「御父さんは詩の会だ」

誠吾は相変らず普通の顔で答えたが、代助の方は多少可笑しかった。

「姉さんは」

「御客の接待掛りだ」

また嫂が後で不平を云う事だろうと考えると、代助は又可笑しくなった。

代助は、誠吾の始終忙しがっている様子を知っている。又その忙しさの過半は、こう云う会合から出来上がっているという事実も心得ている。そうして、別に厭な顔もせず、一口の不平も零さず、不規則に酒を飲んだり、物を食ったり、女を相手にしたり、していながら、何時見ても疲れた態もなく、噪ぐ気色もなく、物外に平然として、年々肥満してくる技倆に敬服している