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それから
それから
線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁
この男はいくら酔っても、中々平生を離れない事がある。かと思うと、大変に元気づいて、調子に一種の悦楽を帯びて来る。そうなると、普通の酒家以上に、能く弁ずる上に、時としては比較的真面目な問題を持ち出して、相手と議論を上下して楽し気に見える。代助はその昔し、麦酒の壜を互の間に并べて、よく平岡と戦った事を覚えている。代助に取って不思議とも思われるのは、平岡がこう云う状態に陥った時が、一番平岡と議論がしやすいと云う自覚であった。又酒を呑んで本音を吐こうか、と平岡の方からよく云ったものだ。今日の二人の境界はその時分とは、大分離れて来た。そうして、その離れて、近づく路を見出し悪い事実を、双方共に腹の中で心得ている。東京へ着いた翌日、三年振りで邂逅した二人は、その時既に、二人ともに何時か互の傍を立退いていたことを発見した。
ところが今日は妙である。酒に親しめば親しむ程、平岡が昔の調子を出して来た。旨い局所へ酒が回って、刻下の経済や、目前の生活や、又それに伴う苦痛やら、不平やら、心の底の騒がしさやらを全然痳痺してしまった様に見える。平岡の談話は一躍して高い平面に飛び上がった。