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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】

佐藤 春夫

線上閱讀佐藤 春夫《たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】(『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,182 字 · 48 頁

青空文庫

「おそれ入った、」「こわいな」「どうして判ったろう」「不思議やな」この衆道家は一しきりそんな言葉を繰返していました。そうして彼はわたしには何もかくすことは出来ないといいました。実際わたしは彼のことなら大ていのことは見抜くことが出来ました。というのは鎌をかけておびき出しさえすれば、彼はひとりでに自分のことをしゃべり出し、そうして置いて自分で語るに落ちたことは気づかずに、みんなわたしが見抜いたものとして驚歎するのでした。傍にいる人が彼に彼が用もない自己告白を自分でしていた結果だと注意をすると、彼はしたしげに答えるのでした。

「そんなことはわかっているさ。でもこうして、人に見抜かれたように花を持たせますのやがな。それが社交の要訣や。何もかもわかっているのや」

負け惜みのようでもあったし本当に人を食っているようでもありました。多方面にいろいろと趣味のあるわたしだが、そのわたしもまだ衆道の趣味だけはない。それで折角こんな衆道家が出現してもこの点では用はなかったが、この男の面白いことは実に尽きませんでした。わたしは友人の息子の十五になったのをひとり、彼に紹介をして事のなりゆきを観察することにしました。