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どこかでよぶような

どこかで呼ぶような

小川 未明

線上閱讀小川 未明《どこかで呼ぶような(どこかでよぶような)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 3,361 字 · 7 頁

青空文庫

わたくしが門を出ると、ちょうど、ピイピイ、笛をならしながら、らお屋が、あちらのかどをまがりました。

わたくしは、あの音を聞くと、なんとなく、春さきの感じがします。どこへ遊びにいくという、あてもなかったので、足のむくまま原っぱへきました。知らぬまにとなりのペスが、ついてきました。どうしたのか、きょうは、だれのかげも見えませんでした。

風のない、おだやかな空は、どんよりとうるんで、足もとの枯れ草は、ふかふかとして、日の光にあたたまっていました。その太陽のにおいをなつかしむように、わたくしは、ごろりとからだをなげだしました。ペスも、かたわらへ、前足をのばして、うずくまりました。

しばらくすると、遠くの方から、オートバイの走ってくる音がしました。ペスは、はねおきて、往来のまん中へ出て、ほえたてました。

「ペス! ペス!」と、わたくしは、よびかえそうとしました。しかし、きかぬので、「ばかっ。」と、かけていって、わたくしは、犬を追いはらいました。

オート三輪車には、黒い眼鏡をかけた、おじさんが乗っていました。きゅうに、速力をゆるめると、

「どれ、すこし、休んでいこうか。