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なまずとあざみのはなし
なまずとあざみの話
小川 未明
線上閱讀小川 未明《なまずとあざみの話(なまずとあざみのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 3,008 字 · 6 頁
春の川は、ゆるやかに流れていました。その面に、日の光はあたって、深く、なみなみとあふれるばかりの、水の世界が、うす青くすきとおって見えるように思われました。
この不思議な殿堂の内には、いろいろの魚たちが、おもしろおかしく、ちょうど人間が地の上で生活するときのように、棲息していたのであります。なかでも、小さな子供たちは、毎日群れをなして、水面へ浮かび、太陽の照らす真下を、縦横に、思いのままに、金色のさざなみを立てて泳いでいました。そして晩方、岸の暗いすみの巣のあるところへ帰ってくると、自分の親たちや、またほかの魚たちに、見てきたいろいろのことを物語ったのでした。
「大きな船がいったぞ。そのときは、おれたちは、波の中へ巻きこまれようとした。やっと急いでほどへだたった、安全な場所へ避けることができた。船の上では、ほおかむりをした男が、たばこをすっていた。」
「あちらの岸の方には、人間が、いくたりも長いさおをもっていったりきたりしていた。お父さんや、お母さんたちも、気をつけんければならん……。」
あかあかと水の上をいろどって、夕日は沈みました。水の中は、いっそう、暗く、うるわしいものに思われました。