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たにしのしゅっせ
むかし むかし あるところに
楠山 正雄
線上閱讀楠山 正雄《むかし むかし あるところに(たにしのしゅっせ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 13,919 字 · 29 頁
きれいな腰元たちは、歌をうたったり踊りをおどったりしました。浦島はただもう夢のなかで夢を見ているようでした。
ごちそうがすむと、浦島はまた乙姫さまの案内で、御殿のなかをのこらず見せてもらいました。どのおへやも、どのおへやも、めずらしい宝石でかざり立ててありますからそのうつくしさは、とても口やことばではいえないくらいでした。ひととおり見てしまうと、乙姫さまは、
「こんどは四季のけしきをお目にかけましょう」
といって、まず、東の戸をおあけになりました。そこは春のけしきで、いちめん、ぼうっとかすんだなかに、さくらの花が、うつくしい絵のように咲き乱れていました。青青としたやなぎの枝が風になびいて、そのなかで小鳥がないたり、ちょうちょうが舞ったりしていました。
次に、南の戸をおあけになりました。そこは夏のけしきで、垣根には白いうの花が咲いて、お庭の木の青葉のなかでは、せみやひぐらしがないていました。お池には赤と白のはすの花が咲いて、その葉の上には、水晶の珠のように露がたまっていました。お池のふちには、きれいなさざ波が立って、おしどりやかもがうかんでいました。
次に西の戸をおあけになりました。