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ようかづきのばん

ようか月の晩

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《ようか月の晩(ようかづきのばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,070 字 · 7 頁

青空文庫

夜、銀座などを歩いていると、賑やかに明るい店の直ぐ傍から、いきなり真闇なこわい横丁が見えることがあるでしょう。これから話すお婆さんは、ああいう横町を、どこ迄もどこ迄も真直に行って、曲ってもう一つ角を曲ったような隅っこに住んでいました。それは貧乏で、居る横町も穢なければ家もぼろでした。天井も張ってない三角の屋根の下には、お婆さんと、古綿の巣を持つ三匹の鼠と、五匹のげじげじがいるばかりです。

朝眼を覚ますと、お婆さんは先ず坊主になった箒で床を掃き、欠けた瀬戸物鉢で、赤鼻の顔を洗いました。それから、小さな木鉢に御飯を出し、八粒の飯を床に撒いてから、朝の食事を始めます。八粒の米は、三匹の鼠と五匹のげじげじの分でした。さっきから眼を覚まし、むき出しの梁の上で巣を片づけていた鼠やげじげじは、木鉢に箸の鳴る音を聞くと、揃って床に降りて来て、お婆さんの御招伴をするのでした。

お婆さんも鼠達も、食べるものは沢山持っていません。食事はすぐ済んでしまいます。皆が行儀よくまた元の梁の巣に戻って行くと、お婆さんは、「やれやれ」と立ち上って、毎日の仕事にとりかかりました。