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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

線上閱讀渡辺 温《アンドロギュノスの裔(アンドロギュノスのちすじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 頁

青空文庫

」とBの細君は歎願した。

「いいとも。そして、Aに決意をすすめるがいい。出来るだけ、自分の浅はかさを手厳しく感じさせてやりたまえ。尤も、僕はAのために、一時間だって待って遣るわけにはいかないがね。――だが、細君は、若しかすると未だ何も判っていないのかも知れないのだから、兎に角細君の前では出来るだけ何気なく振舞わなければいけない……」

Bはそう答えると、外景の夕暮れた窓に向って、ガラスの中に映った自分の不機嫌な顔を瞶めるように、むっつりと口を鎖した。

細君は大きな不安に怯えながら、泪を乾して思案に暮れた。

3

B夫婦が、A夫婦の泊っている海岸の宿屋についたのは、もう大分遅かったので、四人は極く短い時間を談笑してからそれぞれの部屋に寝た。

翌朝、起き抜けに、Bの細君はAに案内を頼んで、浜辺へ散歩に出た。

濃い朝霧の中に、上天気の朝日のさしている砂丘に並んで腰を降ろして、Bの細君は昨日の汽車の中のことをすっかり話した。

Aは果して狼狽した。

「僕は、もう当分あなた方に会うまいと思って此処へ来たのだったに!」

「奥さんは、御存知なのですか?」

「僕が残らず喋ってしまったんです。