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ジストマたいじのはなし

ジストマ退治の話

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《ジストマ退治の話(ジストマたいじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,042 字 · 23 頁

青空文庫

私の場合は、途中一度も故障なく、順調に治癒したのであるが、それでもまる六カ月かかった。敗戦後のこの気ぜわしい時代には、不向きな病気である。胃周囲炎の方は、原因はよくわからないから仕方ないとして、肝臓ジストマの方は、銀座の某店で鮒の刺身を食ったからである。だからああいう危いものは、食わない方がよい。

銀座の某店に罪を帰したのは、次のような調査にもとづいた結論である。第一に私も小林君もともに某店で鮒の刺身を食い、二人ともジストマにとっつかれた。それが第一の理由である。その時はほかにも食った人があったので、その人の便をもらって、小泉さんに調べてもらったところ、無罪であった。ただし鮒によって中間寄生をしているのといないのとがあるので、これは否定の資料にはならない。運が悪いと、刺身の一切れで百匹も二百匹もいる場合があるそうである。

もっともこれだけでは不充分である。伊東の海魚は時に川にもはいって来るので、ひょっとするとジストマをもっているかもしれない。それで私と同じものを食っている妻の便を調べてもらったが、これには卵はなかった。

今一つ疑問がある。それは肝臓ジストマは七年くらい寿命があるそうであるが、私は郷里の加賀へ帰ると、鮒の刺身が好きで、よく食ったものである。