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ジストマたいじのはなし
ジストマ退治の話
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《ジストマ退治の話(ジストマたいじのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,042 字 · 23 頁
加賀地方にはジストマはいないということになっているが、それも怪しいものである。ところで巧い人を思いついたのであるが、妻の兄で金沢に住んでいて、釣が好きで鮒の刺身を常食のようにしている男がある。それでその兄の便を取り寄せて調べてもらったが、これにも卵は全然見付からなかった。
以上の結果から、金沢の鮒でもなく、伊東の刺身でもない確率が大きく、銀座の某店の鮒である確率が非常に大きいという結論に達したわけである。こんなつまらぬ調査をしなくても、今後鮒の刺身さえ食わねばいいはずであるが、二カ月もミルスの注射をしながら身体をアンチモンに馴らしている間の退窟しのぎに調べてみたことである。
この話の中では、人を殺さないで、虫を殺すリミットの薬とその薬量とは、もちろん科学であるが、患者を実験材料だと心得て診察を行うところの方が、もっと科学的である。科学と非科学との差は、器械を使うか使わないかにあるのではない。何ごとにあれ、眼を開いてものを見るか、眼をつぶって見るかのちがいである。
この話はもう十年以上も昔の話であり、医学のことは専門外であるから、病状の説明や、薬の名前などは、多少ちがっているかもしれない。