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さんえもんのつみ

三右衛門の罪

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《三右衛門の罪(さんえもんのつみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,132 字 · 15 頁

青空文庫

治修は顔色を和げたまま、静かに三右衛門の話し出すのを待った。三右衛門は間もなく話し出した。

「ただこう云うことがございました。試合の前日でございまする。数馬は突然わたくしに先刻の無礼を詫びました。しかし先刻の無礼と申すのは一体何のことなのか、とんとわからぬのでございまする。また何かと尋ねて見ても、数馬は苦笑いを致すよりほかに返事を致さぬのでございまする。わたくしはやむを得ませぬゆえ、無礼をされた覚えもなければ詫びられる覚えもなおさらないと、こう数馬に答えました。すると数馬も得心したように、では思違いだったかも知れぬ、どうか心にかけられぬ様にと、今度は素直に申しました。その時はもう苦笑いよりは北叟笑んでいたことも覚えて居りまする。」

「何をまた数馬は思い違えたのじゃ?」

「それはわたくしにもわかり兼ねまする。が、いずれ取るにも足らぬ些細のことだったのでございましょう。――そのほかは何もございませぬ。」

そこにまた短い沈黙があった。

「ではどうじゃな、数馬の気質は? 疑い深いとでも思ったことはないか?」

「疑い深い気質とは思いませぬ。どちらかと申せば若者らしい、何ごとも色に露わすのを恥じぬ、――その代りに多少激し易い気質だったかと思いまする。