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さんえもんのつみ

三右衛門の罪

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《三右衛門の罪(さんえもんのつみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,132 字 · 15 頁

青空文庫

その節わたくしは小左衛門殿の代りに行司の役を勤めました。もっとも目録以下のものの勝負だけを見届けたのでございまする。数馬の試合を致した時にも、行司はやはりわたくしでございました。」

「数馬の相手は誰がなったな?」

「御側役平田喜太夫殿の総領、多門と申すものでございました。」

「その試合に数馬は負けたのじゃな?」

「さようでございまする。多門は小手を一本に面を二本とりました。数馬は一本もとらずにしまいました。つまり三本勝負の上には見苦しい負けかたを致したのでございまする。それゆえあるいは行司のわたくしに意趣を含んだかもわかりませぬ。」

「すると数馬はそちの行司に依怙があると思うたのじゃな?」

「さようでございまする。わたくしは依怙は致しませぬ。依怙を致す訣もございませぬ。しかし数馬は依怙のあるように疑ったかとも思いまする。」

「日頃はどうじゃ? そちは何か数馬を相手に口論でも致した覚えはないか?」

「口論などを致したことはございませぬ。ただ………」

三右衛門はちょっと云い澱んだ。もっとも云おうか云うまいかとためらっている気色とは見えない。一応云うことの順序か何か考えているらしい面持ちである。