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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 頁
それは文久元年の夏のことで、その頃わたくしは何うも毎晩よく眠られない癖が付きましてね、まあ今日ならば神経衰弱とでも云うのでしょうか、なんだか頭が重っ苦しくって気が鬱いで、なにをする元気もないので、気晴しのために近所の小さい講釈場へ毎日通ったことがありました。今も昔もおなじことで、講釈場の昼席などへ詰めかけている連中は、よっぽどの閑人か怠け者か、雨にふられて仕事にも出られないという人か、まあそんな手合が七分でした。
わたくしなどもそのお仲間で、特別に講釈が好きというわけでもないのですが、前に云ったような一件で、家にいてもくさ/\する、さりとて的なしに往来をぶら/\してもいられないと云うようなことで、半分は昼寝をするような積りで毎日出かけていたのでした。それでも半月以上もつゞけて通っているうちに、幾人も顔なじみが出来て、家にいるよりは面白いということになりました。昼席には定連が多いので、些とつゞけて通っていると、自然と懇意の人が殖えて来ます。その懇意のなかに一人のお武家がありました。
お武家は三十二三のお国風の人で、袴を穿いていませんが、いつも行儀よく薄羽織をきていました。