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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《三浦老人昔話(みうらろうじんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,637 字 · 224 頁
勤番の人でもないらしい。おそらく浪人かと思っていましたが、この人もよほど閑な体だとみえて、大抵毎日のように詰めかけている。しかもわたくしの隣に坐っていることも屡※(二の字点、1-2-22)あるので、自然特別に心安くなりましたが、どこの何ういう人だか云いもせず聞きもせず、たゞ一通りの時候の挨拶や世間話をするくらいのことでした。ところが、ある日の高座で前講のなんとかいう若い講釈師が朝鮮軍記の碧蹄館の戦いを読んだのです。
明の大軍三十万騎が李如松を大将軍として碧蹄館へくり出してくる。日本の方では小早川隆景、黒田長政、立花宗茂と云ったような九州大名が陣をそろえて待ちうける。いや、とてもわたくしが修羅場をうまく読むわけには行かないから、張扇をたゝき立てるのは先ずこのくらいにして、さて本文に這入りますと、なにを云うにも敵の大軍が野にも山にも満ち/\ているので、さすがの日本勢もそれを望んで少しく気怯れがしたらしい。大将の小早川隆景が早くもそれを看て取って、味方の勇気を挫かせないために、わざと後向きに陣を取らせた。こうすれば敵はみえない。なるほど巧いことをかんがえたと講釈師は云いますが、嘘かほんとうか、それはあなたの方がよく御承知でしょう。