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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《三郎爺(さぶろうじい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 頁
それをつかまえつかまえ、一方では時間を超越したその努力を続けて行けるほど、彼の脳髄は細かくない。異常な忍耐をもってたかだか一二行も読むと、残酷に本を投げ出して、大欠伸(おおあくび)をする彼は、もじゃもじゃな頭の上で不釣合なちょん髷を踊らせながら、いたずらを始める。本を読んだときにかぎって、そのあとの「あたけかた」はひどかったのだそうだ。
或るとき、何でも行った年の暮れ頃らしい。いやな本に、気が鬱していた彼は、日向のぽかぽかする本堂の縁側に腰をかけて、両足をぶらぶら振りながら、相手欲しそうにあたりを眺めまわしていた。和尚さんが留守なので、納所(なっしょ)の方もひっそり閑として、どこかで寺男の藁を打つ音が、木魚のように聞える。
ときどき思い出したように洟(はな)を啜り上げながら、当もなくさまよっていた彼の眼は、やがてフトかなたの鐘楼の中に、大きな体をのっしりと下っている、鐘の上に吸いつけられた。
まだ子供だった彼に、鐘楼は禁断の場所であった。火事か、異変のあったときででもなければ、刻限以外の鐘は撞(つ)かないことになっていた時分のことであるから、いくら可愛がっている三郎坊主にも、鐘だけは触らせなかったのである。