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さぶろうじい

三郎爺

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《三郎爺(さぶろうじい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 頁

青空文庫

仕合わせなことであった。

彼はしばしば自分を満足するように使ってくれるのは、山沢さん以外にこの世界では一人もいないことを思う。そして、その人の死後の自分に、幾分か心淋しい想像をする。

けれども、この感謝が一度脣から外へ出ると、旦那様だったりゃこそ、この俺がああして使われてやった。という言葉で発表される。

そこがあくまでも彼である。臆面もなく愛すべき自負をひけらかすところに、彼の彼たる面目が、躍如としている。

子供の時分、梁から下げた俵につかまって、和尚さんの杖を合図に真面目くさって、ボーンと鳴った彼は、このときもなお、そのときのような単純な、憎みようのない稚気を持っていたのである。

彼が山沢さんに出入するようになってから二三年後、多分明治七八年頃のことだったろう。

何かやはり事業の関係で、五六里山奥の或る湖水まで調査に行ったことがある。山沢さんと、下役二人とまたその下役である彼と四人の一行であったらしい。朝早く村を立って、昼頃目的地へつく予定で歩いて行った。

その時分は、冬が今よりずっと寒かったかわりに、夏の暑さは、かなり凌ぎよかったらしい。八月頃だったのに、弁当やその他の荷を、少からず背負いながら、三郎はそんなに暑いとも苦しいとも思わなかった。