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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
このようにして、その当時の実情に即して、漢詩と和歌という名辞が宮廷の人たちに用いられるようになったと思われる。ただそれと同時に忘れてならぬのは、漢詩と和歌、からうたとやまとうたという文字なり言葉なりは、繰り返していうようではあるが、宮廷を中心にした貴紳の間でのことであったろうということである。ところが漢字の使用に馴れてくると、『万葉集』や詔のうちの一体である宣命やなどに見られるように、早くも漢字を一種の表音記号に用いて、日本語をかなり精密に記載しうるようになってきた。日本語が字で書けるようになると、やがて支那の詩賦に真似て、はじめから文字にたよった読む歌がつくられはじめた。そのことは実に日本文学史の上から見れば、画期的な大事件だったのである。現在のごとく口承文芸に対立させて、詩といわず小説といわず、すべて文字的創作文学のみをはっきり文学と意識するかのごとき立場からいえば、日本文学史はまさにこの時代にはじまったのであり、和歌文学はまさにこの時代に発芽したのである。
とにかく字に書いて個人に送ったり、一人備忘にそなえたりするうちに、表現は自ずと個人の癖をよく出すようになり、読者も特定の一個人の感懐としてその意味を汲みとることに馴れてくる。