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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

が、それだけに古体を存したということになる。そしてたとえ短歌形式であっても、神歌だったり小歌だったりで、決して和歌ではないのである。仏会の歌もはじめは前に引用した維摩講のときの歌や、薬師寺に伝わっている仏足石歌碑の歌や、百石讃歎の歌やのように短歌であるが、慈覚大師あたりから後では梵讃漢讃の形にならって、七五調の長大な和讃が生れてくる。歌謡の方では、古代の長歌・旋頭歌なども一時流行の体であって、後から新しいものが取ってかわって行ったように、短歌の体もまた一時の体に過ぎなかったので、やがてそれが古体と見られるようになり、更にまた新様の歌体が作られていったのである。そして日本語の歌謡は諸君も熟知されるように、たとえば木曾節の7775調、

木曾の御嶽さん

夏でもさむい

袷貸したや

足袋そえて

のような、つまり、近世民謡の流行形式である都々逸形式のようなものにまで変ってきた。そして更に、どしどし新しい体が生れようとしているのである。平家琵琶や宴曲・謡曲・浄瑠璃・長唄・浪曲などのような、語り物風なのや、謡い物にしても長いものに到っては、千差万別である。音楽的詩歌の方が右のような勢である中にあっては、平安時代に生じたように、文字的詩歌である漢詩や和歌やを逆に再び音楽詩歌に引きもどして、朗詠というようなものをはじめるようになって