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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
『詞花』のように感覚的表現や戯言にたよるようになっていったということは、とおい平安時代のこととして気楽に見てはすごせないものである。和歌が短歌の形式を守る限り、その頃の堂上人たちは、自由に楽に抒情をすることが出来にくくなっていたのである。短歌文学の危機であったと思われる。
それを暗示する一つの逸話を挿むことにしよう。それは『今鏡』という鎌倉の初期に書かれた歴史文学の「村上源氏、にひまくら」の章にのっている話だが、源雅定が若い頃、石清水臨時祭へ勅使となって臨んだことがあったが、式がすんで退出するとき、松の梢に時鳥の鳴くのが聞えた。時の陪従、つまり勅使のお供をして、神前に音楽を奉納するお供の楽人であるが、その陪従の一人が『金葉集』の撰者の源俊頼であった。雅定は俊頼に向っていった、「木工の頭の殿はあの声をお聞きですか」。すると俊頼はすぐ、「思いもかけぬ春鳴けばといった趣でございますな」と答えた。これは『後拾遺集』春下に、
三月つごもりに時鳥の鳴くを聞きてよみ侍りける 中納言定頼
郭公思ひもかけぬ春なけば今年ぞ待たで初音聞きつる
とあるのを思い浮べての返事であった。