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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
このようにして、地方の国司から出て太政大臣まで経のぼった平忠盛清盛父子二代のうちの平家の地位の昇り方というものは一ばん目に立つのであるが、元来京都にあった村上源氏や藤原氏の諸流にしても、案外なほどの地盤を獲得したのであって、現世的な勢力の交代はなかなかはげしかったのである。そうした中では、これまで父祖の余栄を愉しんで、分に安んじた高からず低からぬ、割に楽しい現実生活を営んで来た教養ある中堅どころの公家の中に、割にあきらめの良い、粘りの足りない子弟が多くて、世相のはげしさをうとましく思い、追従と暗中飛躍と賄賂とがあまりによく利くのに愛想をつかして、隠退する者が多くあった。彼らはひどい野心もなく、自分のつとめを程よく守り、分相応の待遇を世から受ければ十分幸福な人々で、生活的には現状維持派であり、現実生活の礼讃者である場合が多く、現状破壊の行動者でなく、他人を羨み妬む不平組であることは殆どない。そうした人々が隠遁を決行するまでには、随分心の準備が必要ではあったろうが、いざ隠遁すれば、それは本質において閑適の詩人であった。というよりは世を見限ることによって、一つの詩境を建立した人々だといった方が、なおよいかも知れない。