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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

から『千載集』までの七集の註を同じようにつくるというように、観念的な、和歌の「詩」的価値以外の種々な条件を勘定に入れた考え方はしないのである。俊成はあくまで「詩」を中心にした主体的な評価である。本来「詩」を感じるということは、はたからは分らぬことで、本人の主観がそう感じるのほかには感じられないものなのだから、俊成の態度こそ本当のものなのである。そして、その結果、彼は『古今集』を第一等の歌集だとした。

思うに当時、宮廷貴紳を挙げて、このさき如何になってゆくか分らないような不安なけはいがあらわれてきておったことは、すでに諸君の諒解された通りである。保元平治の乱や清盛の独裁政治というようなものは実は表面化した一部のあらわれに過ぎないのであって、あの四百年に垂んとする平穏な平安時代に、このような異変を可能ならしめるようになった、その見えざる世相の転変こそ、きわめて徐々にではあったが、公家の人心に無常を観ぜしめる、どうにもならぬ原因であった。だから、大僧正慈円などは『愚管抄』の中で、歴史を推進させる道理の存在をきつく主張したけれども、その道理が具体的事件の上に如何にはたらくものであるかを法則化して見せる社会史学のようなものは、何ら存していなかったのであるから、人々はただ何となき不安の中にあるのほかなかったのである