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ちゅうせいのぶんがくでんとう
中世の文学伝統
風巻 景次郎
線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁
さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵ならべむ冬の山里
とふ人も思ひ絶えたる山里のさびしさなくば住みうからまし
ここをまた我が住みうくて別れ往なば松は独りにならむとすらむ
ゆたかな情感は最後まで歌を貫いている。だから、
心なき身にもあはれはしられけりしぎ立つ沢の秋の夕暮れ
のような歌も出てくるのである。出だしからきざな歌だという批評も多いが、「心なき身」は何もわざとらしい謙譲の語ではない。坊主の身にもということである。とにかくに、西行の枯れた境というものはきわめて徐々に、年とともに訪れてきたのであって、その歌に人間の心の温かみを与えたものは、悟り切れなかった心である。そうした人間が隠者にならねばならなかった環境である。それ故に彼の一生を支えた文学精神であったのである。
『山家集』は一千五百七十七首の歌を持つが、他人の歌が七十七首あるので、西行の歌は一千五百首である。他に様々の文献に見える短歌六百九首、連歌が九首、合計二千百十八首。しかし佐佐木信綱博士の蔵される『山家集古鈔本』の奥書に、『山家集』の歌は三千百十二首あると記されているので、今見る『山家集』が完全のものでなく、抄本であることが分る。