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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

勿論抒情といっても、右に挙げた歌のように豪奢な、絵巻的な抒情ばかりではない。たとえば式子内親王などは、女流作家の中ばかりでなく、す直な詠歎調の上では当時第一等のお方であるが、そのお歌にはつぎのようなのがある。

いま桜咲きぬと見えてうすぐもり春にかすめる世のけしきかな

はかなくて過ぎにしかたをかぞふれば花にもの思ふ春ぞ経にける

花ならでまた慰むるかたもがなつれなく散るをつれなくてみむ

花は散りその色となく眺むればむなしき空に春雨ぞふる

桐の葉もふみ分けがたくなりにけりかならず人を待つとならねど

秋はきぬゆくへも知らぬ嘆きかなたのめし事は木の葉ふりつつ

玉の緒よたえなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする

忘れてはうちなげかるる夕かなわれのみ知りてすぐる月日は

君をまだ見ずしらざりしいにしへの恋しきをさへ嘆きつるかな

つかのまのやみの現つもまだしらぬ夢より夢にまよひぬるかな

ここに取ったのは『新古今集』に取られなかったものも含んではいるが、大部分は『新古今集』のものである。しかしながらこうした西行の歌に近い、作者の心の温かみを伝えるような詠嘆は、『新古今集』の中に交ると殆ど眼立たなくなってしまうのである。