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かかこうしゅ

中国の怪談(二)

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《中国の怪談(二)(かかこうしゅ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,926 字 · 225 頁

青空文庫

道は山の出っ鼻を廻って往った。樹と巌が入り乱れた処があって、夕陽の光が山風の中に物凄い色を見せていた。僕がさきになってその方へ往った。左側には深い壑があった。

道は爪前さがりになっていた。杜陽は滑らないように脚下に注意していた。と、不意に僕の叫ぶ叫び声がした。それはなんとも形容のできないおそろしい声であった。杜陽はびっくりして前の方を見た。牛ほどもあるおおきな獣が後ろにのけぞった僕の胸のあたりに口をやっているところであった。杜陽は後ろへ逃げようとした。そのはずみに足を踏みはずして、そのまま壑の中へ墜ちて行った。

杜陽は意識が回復してきた。彼は眼を開けた。大きな樹の幹が微暗い中に見えていた。彼は自分は壑の中へ墜ちたが運好く死なずにいるな、と思いだした。そう思うと彼の心に喜びが湧いてきた。余裕のできたその心には、虎に噛まれようとしていた僕のむごたらしい姿も映ってきた。

杜陽は体を起そうとした。体の下には朽葉が木綿の厚い蒲団を敷いたように柔かく積み重なっていて、突いた手に力が入らなかった。彼は注意して起きながら、この朽葉の上へ墜ちたから怪我もしなかったのだと思った。