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こんにちのぶんがくのてんぼう

今日の文学の展望

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《今日の文学の展望(こんにちのぶんがくのてんぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,109 字 · 83 頁

青空文庫

彼等の専門的対象は徳川期で止った。特に、世界とその一環としての日本の文学が、質的に大きい変転を行い、波瀾を経つつある最近の「十年間あまり、国文学研究の中道が、殆どすべて本文校訂とか稿本作成とか、考証とか、索引作成とかいう資料整理的の仕事それ自体を目的とする範囲を出なかったことは著しい事実」であった。このことは、現代生活と文学とから研究の分野を切りはなしてしまったのみならず、専門家間に実証主義という名で呼ばれているそうであるところの一部の研究家を、その準備的研究の上に固着せしめ、枕草子の専門家或は大鏡の専門家という、瑣末な活動に封鎖する結果をひき起した。

整理された研究材料から、国文学としての組織立った学説、日本文学の発展・変化の内外諸関係を支配し、そして、支配しつづけて今日に及んでいる何かの法則を発見するべき段になって、現在、国文学研究者自身が、その法則を把握するに先ず必要な学者としての立場の選定について、大なる困難、撞着、対立に置かれている。この困難性が、一方では国文学熱を高めつつある作用の逆の面として現出していることは、現実というものの微妙厳粛な所以である。