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ぶっきょうじんせいとくほん
仏教人生読本
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《仏教人生読本(ぶっきょうじんせいとくほん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 124,886 字 · 246 頁
生れてから今までの間に、一度でも見たり、聞いたり、嗅いだり、味わったり、感じたり、意識したりしたことは、必ず脳の中に記録されていて、平常は潜んでいて気付きませんが、折りにふれ、催眠術により、あるいは心を澄ますとき、偶然判って来る意識です)とが喚び起されて、少年の記憶を助けたのでした。
試験地獄に直面して、そこに自分の小さいながらも人生の血路を切り開いて行った健気な態度、自分の繊弱い性質をどうにかして支持して行った苦心、そこに立派に少年の一つの理想が握られていました。苦悩の上に幸福が輝いていました。地獄と極楽とが手を繋いでいました。
その少年は、今では中学校の上級生です。成績も十番以内です。いまでも、試験の時は必ず「仏さま」を念ずると言います。私はそれを聴いてその少年に言いました。
「試験にばかり、仏さまを利用してはいけません。あなたもこれから大人になるのですから、いろいろの事が身に振りかかって来ます。そのとき、何事によらず、仏の力を信じ念じて、立派な人格者、本当の幸福者にならなければなりません。判りますか」。すると少年は答えました。
「判る、判る」と。