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でんきちのかたきうち
伝吉の敵打ち
線上閱讀芥川 竜之介《伝吉の敵打ち(でんきちのかたきうち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,714 字 · 10 頁
とさえ歎息した。この上仇を返そうとすればまず旅に出なければならない。しかし当てもない旅に出るのは現在の伝吉には不可能である。伝吉は烈しい絶望の余り、だんだん遊蕩に染まり出した。「農家義人伝」はこの変化を「交を博徒に求む、蓋し讐の所在を知らんと欲する也」と説明している。これもまたあるいは一解釈かも知れない。
伝吉はたちまち枡屋を逐われ、唐丸の松と称された博徒松五郎の乾児になった。爾来ほとんど二十年ばかりは無頼の生活を送っていたらしい。(註五)「木の葉」はこの間に伝吉の枡屋の娘を誘拐したり、長窪の本陣何某へ強請に行ったりしたことを伝えている。これも他の諸書に載せてないのを見れば、軽々に真偽を決することは出来ない。現に「農家義人伝」は「伝吉、一郷の悪少と共に屡横逆を行えりと云う。妄誕弁ずるに足らざる也。伝吉は父讐を復せんとするの孝子、豈、這般の無状あらんや」と「木の葉」の記事を否定している。けれども伝吉はこの間も仇打ちの一念は忘れなかったのであろう。比較的伝吉に同情を持たない皆川蜩庵さえこう書いている。「伝吉は朋輩どもには仇あることを云わず、仇あることを知りしものには自らも仇の名など知らざるように装いしとなり。