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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

誰も来やあしない。

娘 でも、なんだか跫音が……。

嫗 しっかりおしよ。怖くはないよ。

青年 わたしがここにいます。

(しばしの沈黙。やがて一種の音して、青年の張りたる弓の弦は自然に切れる。人々おどろく。)

青年 や、弓の弦が切れた。

翁 あんなに太い弦が自然に切れた。

(人々は顔をみあわせてしばらく黙す。)

青年 どうも不思議なことがあるものだ。(考える。)弓が役に立たなければ、これで防ぎます。

娘 (又もや叫ぶ。)あれ、あれ。

嫗 なんにも来やあしないよ。

青年 わたしはこの剣を持っています。どんな魔物でも名剣の威徳にはかないません。これをじっと見ておいでなさい。自然に気が鎮まります。

(太刀を娘の前に差付けると、太刀は鍔ぎわより自然に折れる。今度は声を出すものなく、人々はただ黙して眼を見あわせ、いよいよ恐怖の念に襲わる。)

翁 ああ、駄目だ、駄目だ。おまえさんもやっぱり駄目だ。

(青年は残念そうに折れたる太刀をながめて立つ。しばしの沈黙。蛇は衣冠を着け、優美なる姿にて奥よりあらわる。)

翁 ああ、婿が来た。

嫗 え。(いよいよ娘を抱きしめる。)

蛇 約束の通り、婿に来たぞ。