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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁
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蛇 さあ、娘。こっちへ来い。
(蛇は袖をあげて差し招けば、娘は母の手を放れてふらふらと歩みゆく。蛇は娘の手を取りて奥に入る。翁と嫗とは茫然としてそのあとを見送る。)
青年 残念だが仕方がない。私にはひとを救うほどの力がないのか。
(青年は持ったる弓をなげ捨つ。やがて奥にて凄まじき物音きこゆ。)
翁 や、あの物音は……。
嫗 娘が長い蛇に巻かれて苦しんでいるのではあるまいか。
翁 どうかして助ける工夫は無いかなあ。
(翁と嫗とはうろうろして奥を窺ううちに、奥より蛇は髪をふり乱して走りいず。蟹は赤き甲をつけ、かの長刀を持ちて追い出ず。)
蟹 卑怯者め。逃げるな。
(蟹は長刀を揮ってかかる。蛇は口より火をふきて奮闘。遂に蟹のために切倒さる。)
翁 さすがの蛇も蟹にはかなわないと見えて、長い鋏でずたずたに切られてしまった。やれ、やれ、ありがたい。これでまず安心した。
嫗 それにしても娘はどうしたろう。
(娘は奥よりいず。)
嫗 おお、娘。無事でいてくれたか。
翁 おお、娘……。(走り寄って娘を抱く。)
娘 おっかさん。
嫗 助かったか。
娘 助かりました。おそろしい蛇にまき付かれて、どうなることかと思っていましたら、この強い蟹がどこからかはいって来て、長い鋏で蛇を追いはらってくれました。