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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

」

「その時には又あたらしい分別もござりましょうが、差しあたりましては御坊を頼みまするよりほかには……。」と、小坂部は取り縋るように言った。

「よい、よい。兼好たしかに頼まれ申した。われらもなま若い昔には人並に恋歌も詠んだ、恋文も書いた。しかし世捨てびとの今となって、なまめかしい恋文は手が硬張って能うは書かれまい。はははははは。それも折角のお頼みじゃで、われらも一度は書いて進ぜる。但し二度は無用じゃ。一度の文で相手の返しがあれば重畳、たといそれが梨の礫であろうとも、かさねて頼みには参られなよ。うき世のことが煩ささに、こうして隠れ栖んでいる身の上じゃ。二度が三度とたびかさなって、うき世のことにわずらわさるるは迷惑。それは最初から断わって置きまするぞ。よいか。」

「御迷惑は万々お察し申しておりますれば、かさねて御無理をお願い申しにはまいりませぬ。これは今度かぎり、一生に一度のお願いでござりまする。」

「では、すぐに書いて進ぜよう。然るべき料紙を持たれたか。」

小坂部は懐中から畳紙をとり出して、兼好の前にひろげた。紅葉がさねの薄葉の、把る手も薫るばかりなのを膝の上に置いて、兼好はしばらくじっと思案していたが、やがて机の上から筆と硯とを取り寄せて、夏毛の鹿の筆を染めて「なよ竹の」