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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

城の普請中である。春もやがて暮れかかる日の夕方に、秀吉が二、三人の小姓を連れて普請場を見廻っていると、どこからともなしに一人の美しい上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)があらわれて、秀吉のゆく手に立ち塞がった。見馴れぬ女が突然に出て来たので、秀吉も小姓もおもわず目を瞠ってかれを見つめると、上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)はしずかに言った。

「ここはわたしの棲家じゃ。お身たちは誰に許されて我が物顔に振舞うぞ。早うここを立ち退かれい。」

しかしかれの相手は藤次郎や雉六のやからではなかった。その詰問に対して、秀吉は恐れげもなしに答えた。

「そういうお身こそ誰に許されてここへ参られた。羽柴筑前守が縄張りの城中へ女子の身として妄りにまいらるること無用でござる。お身こそ早う立ち去られい。」

「お身はまだなんにも知らぬか。」と、かれは嘲るように笑った。「この姫山と白旗山とはわたしの年久しい棲家で、たとえて言わばこの姫山は本丸、白旗山は出丸じゃ。その白旗山をいっさい取り頽して、さらにこの姫山をも奪おうとするは、あまりの無礼、あまりの狼藉じゃ。