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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集(へいけがに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,094 字 · 411 頁

青空文庫

「はは、多寡の知れた奴らじゃ。」

市松はあざ笑いながら、さらに第五階へのぼって行った。狭い階段を半分ほど登ると、頭の上の暗い壁にぼんやりと薄い光りが見えたので、彼は俄かに身を伏せてその光りのする方をうかがうと、上には物の音もきこえた。さらに抜き足をして登ってゆくと、第五階の頂上と思われるところには、うす黄いろい火の光りが微かに流れて、その火の前には気高く美しい上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)がうしろ向きになって何事かを祈っているらしかった。

「おのれは何者じゃ。」と、市松は腰刀の柄を挫ぐるばかりに握りしめながら叫んだ。

上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)はしずかに振り向いた。その顔はうしろ姿で想像したよりも更に闌けたもので、一種凄麗の気を帯びているのに、市松もさすがにおびやかされた。

「うるさい奴。又しても参ったか。」と、かれは眉をあげて言った。「おのれの主人にも言うて聞かせた通り、ここはわたしの棲家じゃ。余人の入るべきところでないと思え。」

「なんの、おのれ……。」

市松は力足を踏んで駈け寄ろうとすると、五体は眼に見えない糸につながれたようで、あとへも先きへも動かれなくなった。