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のぶこ

伸子

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《伸子(のぶこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 頁

青空文庫

と云ったが、

「――こうなさいな。もしあなたが明日立つのに一人ぽっちであがるのお厭だったら、動坂へいらっしゃい、今日は父も帰る日だから丁度いいわ」

阪部は、伸子の心持を理解したらしく、

「――成程」

と云った。

「佐々さんにお目にかかるのも愉快だな、ではそう願おうか――突然でかまいませんか」

「いいでしょう。――よそへ行くよりよくてよ」

伸子は、動坂の家へ電話をかけた。

途中で、何かの話の端につけ、阪部は、

「――今日のことは――まあ云わん方がよかろうな」

と独語のように云った。

「何のこと」

「いや、この間の様子でも、佃君は一種の病人ですよ、精神的に――。だから、病人には病人を扱う心掛が必要だろうと思う。つまり、聞かせる必要のないことまで聞かせるに及ぶまいというのです」

「――……」

それは不愉快な注意であった。伸子は、阪部からそのような言葉は予期しなかった。

阪部の言葉は印象濃く、数日経った後まで彼女を滅入らせた。阪部との遠慮ないつき合いを、伸子は数年来安心して楽しんで来た。彼と話すことは面白く、刺戟された。彼も、伸子のやんちゃや知識慾やを、楽しんでいたらしかった。