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のぶこ

伸子

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《伸子(のぶこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 頁

青空文庫

無心な、熱っぽい、美しい様子であった。

直ぐそばに印半纏の男がいたが、伸子は寛いだいい心持でいろいろ素子と話した。多くの場合、伸子が切り出す廻り合せになった。チェホフのこと、西鶴のこと、金槐集のこと。金槐集は最近に読み、亢奮が鮮かによみがえったので、伸子は熱心にそれについてしゃべっていたが、突然妙な顔をして言葉をとぎらせた。

「一寸――私さっきから間違えていやしなかって?」

「名ですか?」

「タメトモって云いやしなかったこと? 一度か二度――」

素子は、はははと笑い出した。

「何だか変だと思った!」

「皮肉やね、黙ってにやにやしているなんて法はないわ」

自分も笑い出したが、伸子はきまりわるく感じ、少し赧くなった。

「――本当に、あなたが云ったんで、ああそうかと思ったんですよ、どっちみち話はわかるからいいじゃありませんか、名なんぞ」

思い出すと、二人でこの失策を笑い笑い、彼女らはそのベンチに二時間ばかりいた。

「あなたはどう? 私はね、散歩しても同じ路を往きも帰りも通るのが大嫌いですよ、どうにかして別の路を歩かないじゃあ気がすまない」

桜田門の方へ抜ける道を歩きながら、素子がそう云った。