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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

線上閱讀金子 ふみ子《何が私をこうさせたか(なにがわたしをこうさせたか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 頁

青空文庫

父

父

私の記憶は私の四歳頃のことまで遡ることができる。その頃私は、私の生みの親たちと一緒に横浜の寿町に住んでいた。

父が何をしていたのか、無論私は知らなかった。後できいたところによると、父はその頃、寿警察所の刑事かなんかを勤めていたようである。

私の思い出からは、この頃のほんの少しの間だけが私の天国であったように思う。なぜなら、私は父に非常に可愛がられたことを覚えているから……。

私はいつも父につれられて風呂に行った。毎夕私は、父の肩車に乗せられて父の頭に抱きついて銭湯の暖簾をくぐった。床屋に行くときも父が必ず、私をつれて行ってくれた。父は私の傍に附きッきりで、生え際や眉の剃り方について何かと世話をやいていたが、それでもなお気に入らぬと本職の手から剃刀を取って自分で剃ってくれたりなんかした。私の衣類の柄の見立てなども父がしたようであったし、肩揚げや腰揚げのことまでも父が自分で指図して母に針を採らせたようであった。私が病気した時、枕元に附きッきりで看護してくれたのもやはり父だった。父は間がな隙がな私の脈を取ったり、額に手をあてたりして、注意を怠らなかった。