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いど
作家の自伝102 伊藤左千夫
伊藤 左千夫
線上閱讀伊藤 左千夫《作家の自伝102 伊藤左千夫(いど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,100 字 · 19 頁
大事に使えば生涯使えぬこともないが、ぞんざいに使えば直ぐにこわれる、治療したって駄目じゃ只眼を大事して居ればよい。そうさ学問などは迚ても駄目だなあ。こんな調子で無造作に不具者の宣告を与えられてしまった。
最早予は人間として正則の進行を計る資格が無くなった。人間もここに至って処世上変則の方法を採らねばならぬは自然である。国へ帰って百姓になるより外に道はないかなと考えた時の悲しさ、今猶昨日の如き感じがする。学資に不自由なく身体の健全な学生程、世の中に羨しいものはなかった、本郷の第一高等学校の脇を通ると多くの生徒が盛に打毬をやって居る、其の愉快げな風がつくづく羨しくて暫く立って眺めた時の心持、何とも形容の詞がない。世の中と云うものは実に不公平なものである、人間ほど幸不幸の甚しきものはあるまい、相当の時機に学問する事の出来なくなった人間は、未だ世の中に出でない前に、運を争うの資格を奪われたのである、思う存分に働いて失敗したのは運が悪いとして諦めもしようが、働く資格を与えぬとは随分非度い不公平である、いまいましい。それでも運好く成功した人間共は、其の幸福と云うことは一向顧みないで、始めから自分達が優者である如く威張り散らすのである。