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ぞくしゅう

俗臭

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《俗臭(ぞくしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,630 字 · 70 頁

青空文庫

按摩をやとったが、按摩の手では負えず、医者に見せると、神経痛だ。ゆっくり温泉に浸って養生するがよかろうとのことだった。まる三日婆さんの看病で日を費したが、実は到頭中風になった婆さんの腰が立ち直りそうにもなかった。宿や医者の支払いも嵩んで来て、下手すると無一文になるおそれがあると、遂に婆さんを置き逃げすることに決めた。人間見切りが肝腎。――

――が、今も、いやな事ながらその婆さんの顔が彷彿として浮んで来る。小柄で常に首をかしげている、それだけなら往々にして可憐に見える恰好なのだが、この女の場合、顎がしゃくって突き出ているから、いっそ小憎い。それだけに同情の念が薄らぐのだが、その代り、祟りというものがあるなら、こういう婆さんこそ一層恐ろしいのだ。何れにしても寝覚めの良いものではない。というのは、いってみれば、この婆さんを踏台にして、以後トン/\拍子に浮び上って行ったからだ。――

湯崎から田辺に渡り、そこから汽船で大阪へ舞い戻った。船の中で芸者三人連れて大尽振っている中年の男を見つけ、失礼ですが、あんさんは何御商売したはりますのですか、ときくと、男は哄笑一番、やがて、連れの芸者にはゞかるのか低声で、もと紙屑屋しとったが、今はこないに出世しましてん。