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はいくへのみち

俳句への道

高浜 虚子

線上閱讀高浜 虚子《俳句への道(はいくへのみち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 60,608 字 · 120 頁

青空文庫

その灰汁桶の水が切れたのでありましょう。そのしずくの音が止んだと思うと、今度はきりぎりすの声が何処からともなく聞え始めました。」

と凡兆はその夜の侘しいさまを陳べますと、

「そうだ、いかにも倹約な家であって、行灯の油を惜しんで、一家中早寝をするという有様であった。」

と、これも凡兆の話に芭蕉が相槌を打ったのである。(たといその場所にいなくっても差支えない。そういう事を想像してお互に語り合ったのでもよい。)

餞二乙州東武行一

梅若菜まりこの宿のとろゝ汁   芭蕉

かさあたらしき春の曙   乙州

「乙州が江戸に行くというのでそれを餞けする事にする。東海道を通って行くうちに、だんだん春らしくなって来て梅も咲こう、若菜も摘まれよう、またまりこの宿についた時分には、そこの名物であるとろろ汁は是非とも食べて行ったらよかろう。」

と、芭蕉が弟子を送る心を陳べると同時に東海道の風物を思い浮べたのである。そうすると乙州は自分の身を振返って、

「有難うございます。笠も新しく買求めまして、凡て旅の用意も整いました。春の曙に乗じ心も軽く気も晴れやかに旅立つ事でございます。」

と、陳べたのである。