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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
線上閱讀佐々木 邦《凡人伝(ぼんじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 頁
素々歩いて帰る積りのところを勧められたんですから」
「然うですか。しかし……」
「何うぞ」
「恐縮ですな。それではお言葉に甘えます」
と私はお礼を述べて乗って来た。
学校では書記が私の下宿を定めて置いてくれた。そこに落ちついて翌朝改めて又登校した。先ず校長に会って、教員一同へ紹介されたが、その中に昨日の老人がいたのである。
「御同姓河原と申す老朽でございます」
「何うぞ宜しく、先生には昨日……」
「ハッハヽヽ。流石にお若い方は御記憶が宜しい」
と老人は満足のようだった。同姓には驚いた。尚お会計に川原というのがいた。字は違っても音が同じだから、三人鉢合せをして紛らわしい。自然、若河原、老河原、会計川原ということになった。
私の下宿は素人屋だった。母親一人、息子一人の家庭で、息子は市役所へ出ていた。それに嫁を貰うまで私を置いてくれる。
「当分大丈夫でしょうね?」
と念を押したが、
「縁のことですから、堅いお約束は申上げられません」
とあって、心細い下宿人だった。いつ追い出されるかも分らない。甚だ感心しなかったけれど、正直なところが気に入った。士族だそうで、品の好い婆さんだった。