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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

線上閱讀佐々木 邦《凡人伝(ぼんじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 頁

青空文庫

「誰だい?」

「老河原さ」

「巧いものだね」

「大したこともないが、折角お祝いに書いてくれたんだから、二円五十銭はずんだ」

と柴田君は新婚早々らしかった。学校で能く諢われていた。

「至極円満のようだね」

と私も後れながら祝意を表した。

「恐れ入った」

「いつ?」

「この春休みさ」

「こゝで?」

「いや、郷里だ」

「越中富山だったね?」

「冗談言っちゃいけない。金沢だよ。百万石だ」

「何方にしても北陸の雪の中じゃないか?」

「人のことだと思って大束を極めるね」

「奥さんも金沢かね?」

「然うさ。従妹だもの」

「はゝあ」

「子供の時からの許嫁さ」

「ふうん」

「故人達の意思と本人共の希望が漸く実現したのさ」

「此方で恐れ入る」

「ハッハヽヽ」

と柴田君は得意だった。その間、細君の鹿の子さんは平気な顔をして控えていた。もう一般婦人がソロ/\自覚を生じて、万事イケ洒々の時代に多少入っていたのである。

「話が変るけれど、河原君、君は馬面のところへ行くかね?」

「校長かい?」

「うん」

「馬面は穿っている」

「長い顔だよ、実際。僕は教員会議の時、ツク/″\と見ていることがある」

「反対に教頭はマン円だね」

「彼奴はゴム人形だ」