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ぼんじんでん
凡人伝
佐々木 邦
線上閱讀佐々木 邦《凡人伝(ぼんじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 頁
「勉強家が揃って休んだじゃないか?」
と私達は不思議がった。
「僕は知っている」
と矢張り年の多い北村というのが首を縮めた。
「何ですか?」
「徴兵検査さ」
「成程」
と皆大笑いをした。これで二人の年が分った。
翌日、私は、
「長谷川さん、あなたは嘘をついた」
と言って、長谷川さんに組みついた。無論冗談だった。
「参った/\」
「小松さんも嘘つきだ」
「いや、僕は長谷川君と同じだと言っている」
「狡い/\」
「やあい/\!」
と皆囃し立てゝ大騒ぎになった。
「一体誰が素っぱ抜いたんだい?」
と長谷川さんが訊いた。
「北村さんです」
「北村君は斯う見えても僕等より上だよ。去年済んでいる」
「上には上があるんだなあ」
「やあい/\!」
とこれで一番の年頭が分った。
「露顕々々」
と北村さんは頭を掻いて舌を出した。実に年寄の多い級だった。しかしこの北村さんは現に○○市の市会議員で鳴らしている。第一回生の錚々たるものだ。小松さんは卒業後国語漢文科の検定試験を受けて、以来二十何年一日の如く母校に教鞭を執っている。長谷川さんに至っては立志伝中の人物である。年長者にこういう堅実な人が多かったから、私達の級は常に引き締まっていて、先生方の信用が篤かった。