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はつつぼみ

初蕾

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《初蕾(はつつぼみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,525 字 · 35 頁

青空文庫

一

一

「花はさかりまでという、知っているだろう」

「…………」

「美しいものは、美しいさかりを過ぎると忘れられてしまう、人間いつまで若くていられるものじゃない、おまえだってもう十八だろう、ふじむら小町などと云われるのも、もう半年か一年のことだ、惜しまれるうちに身の始末をするのが本当じゃあないか」

「それはわかってますけれど」

お民は客の盃に酌をしながら、ふと考えるような眼つきになった。

「身の始末をするにしたって、ゆきさきのことを考えますからね」

「私の世話じゃあ不安心だと云うのかえ」

「貴方と限ったことじゃあないんです、これまで貴方には誰よりも我儘を云わせて頂けたし、いちばん気ごころもわかって下さるから、お世話になるとすれば他にはありません。でも、そういう身の上の人をなんにんも知っていますけれど、たいていが末遂げないものですからね」

「この場合はそれとは違うじゃないか」

喜右衛門は盃をおき煙草を取った。

「私のは、いろけは二の次にしての話だ、田河屋を買う金も、私がたて替えるというかたちにして、あがって来る物から年割りで返して貰ってもいい、私としては気楽に我儘の云える家、のんびりと手足を伸ばして寛ろげる場所、そういうことだけでも満足なんだよ」