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げきだん「わらうようま」

劇団「笑う妖魔」

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《劇団「笑う妖魔」(げきだん「わらうようま」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,705 字 · 18 頁

青空文庫

妙な電話

妙な電話

「五郎さん、お電話です」

書生の中野が扉をあけて云った。

「大層お急ぎの様子ですからどうぞ」

「誰から?」

「お名前を仰有いません」

父の話に興じていた五郎は、話を中断されるのが残念そうに、軽く舌打をしながら廊下へ出た。

――電話は階段の脇にある。

「僕、五郎。誰だい?」

受話器を耳にあてて云うや否や、向うは待兼ねていたように妙に喉へ詰った囁声で、

「五郎か、日東劇場の地下食堂へ、午後五時に来い。重大な話がある」

「君は誰さ、橋本か――?」

「午後五時だぞ。忘れるな」

「もしもし、誰さ君は、何の用が……」

五郎の言葉が終らぬうち、相手はガチャリと電話を切ってしまった。――五郎は腹立たしそうに受話器をかけながら、

「妙な作声をしていたけど慥に橋本の奴だ。また詰らぬ悪戯をして笑おうというのだろう、その手に乗って堪るかってんだ」

そう呟いて父の部屋へ戻った。

「誰からの電話だ」

「なに悪戯ですよ。橋本の奴が担ごうとしているんです。それより今の話の続きをやって下さい」

「少し疲れたからまたこの次にしよう、今日は是でおしまいだ」

そう云って父親は大きな伸びをした。

五郎の父、海部市造氏は数年前まで警視庁の刑事課長を勤めていたが、長男の一郎が不良少年の群に入って新聞に書かれるようなことになったので、敏腕を惜しまれながら断乎として辞職