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きたのふしぎなはなし

北の不思議な話

小川 未明

線上閱讀小川 未明《北の不思議な話(きたのふしぎなはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,024 字 · 5 頁

青空文庫

どうか、わたしの持ってきた品物を買ってください。わたしは、船に乗って、荒海を渡ってやってきました。」といいました。

村の人たちは、顔を見合わせた。

「このごろ、沖の方は、暴れているだろうに……。」

「まあ、どんなものを持ってきたか……。」

おせんは、持ってきた品物を、みんなの前に拡げて見せました。いつか、青年が、行商にきた時分に持ってきたような、青い貝細工や、銀のかんざしや、口紅や、香油や、そのほか女たちの好きそうな紅い絹地や、淡紅色の布などであったのです。

「娘たちが見たら、さぞ喜ぶことだろう。男には用のないものだ。」

「ああ、男には、用のないもんだ。帰って、女たちに話して聞かせるべい。」

男どもは、体よくその場を引き揚げました。しかし、女たちも、おせんが帰ったと知って、品物を見にやってきたものは、まれだったのであります。

おせんは、あちらから流れてくる、機屋でうたっている唄を聞いて、自分の昔を思い出して、涙ぐんでいました。

「おせんや、雪の降らないうちに、帰ったらいいだろう……。」と、叔母さんは、いいました。

もう、このごろは、毎日のように天気は暴れていました。