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きたのふしぎなはなし
北の不思議な話
小川 未明
線上閱讀小川 未明《北の不思議な話(きたのふしぎなはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,024 字 · 5 頁
おせんは、せっかく持ってきた品物をしょって、二度とこの村へはくることもなかろうと思いながら、暇ごいに歩いたのでした。
海の上は、もはやゆくことができなかった。彼女は、あちらの山を越えてゆかなければならなかった。村の人々の中でも、おせんをかわいそうに思ったものもあります。
「こんなお天気に、女の身であの山が越えられるだろうか?」
彼女が旅立ちをしてから、叔母さんは毎晩のように、門口に立って、あちらの山の方を見て案じていました。雨が降ったり、みぞれになったり、風が吹いたりして、満足の日がなかったのでした。
ちょうど、おせんが、あの山にかかる時分でありました。西の空が、よく晴れて、雲の色が、それは美しかった。さながらおせんが持ってきた、貝細工のように、銀のかんざしのように、紅い絹を拡げたように、淡紅色の布地を見るように、それらのものをみんな大空に向かって投げ撒いたように……。
叔母さんは、この景色を見て、
おせん、
おせん、
西の空に、
紅さした……。
といって、喜びました。
これから、この文句は、長く北国に残って、子供たちが、いまでも夕焼け空を見ると、その唄をうたうのであります。