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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
線上閱讀南方 熊楠《十二支考(下)〔全2冊〕(じゅうにしこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 251,906 字 · 495 頁
た。ところが寺男の老母がこんな事はいつもある、心配するなというたまま多く香火を燃し、盛んに祭食を陳列して大黒神に向い、仏涅槃の霊蹟を拝みに多勢の僧がやって参った、何卒十分に飲食させて不足のないようにと祈り、さて一同を坐せしめ、寺の常食を与うると食物が殖えて皆々食い足ったので、揃うて大黒天神の力を称讃したとある。すこぶる怪しい話だが、今の坊主連と異なり、その頃の出家はいずれも信心厚く、行儀も良かったから、事に慣れた老婆の言を信じ切って、百人前の食物が五倍六倍に殖えた事と思い定めて、食って不足を感じなかったものだろう。寺の住職の妻を大黒というも専ら台所を司って大黒神同様僧どもに腹を減らさせないからで、頃日『大毎』紙へ出た大正老人の「史家の茶話」に『梅花無尽蔵』三上を引いて、足利義尚将軍の時、既に僧の妻を大黒と呼んだと証した。いわく、長享二年十一月二十八日、宿房の大黒を招き、晨盤を侑む。その体蛮のごとし、戯れに詩を作りていわく、〈宿房の大黒晨炊を侑む、合に若耶渓の女の眉を掃くべきに、好在忘心一点もなし、服はただ布にして語は蛮夷なり〉。意味はよく判らないがその頃はや夷子、大黒を対称しただけは判る。