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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
線上閱讀南方 熊楠《十二支考(下)〔全2冊〕(じゅうにしこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 251,906 字 · 495 頁
『仏本行集経』に、飛狸、『経律異相』に、著翅狸、いずれも優陀摩仙が転生とあれば、同物に相違なく、華南で狸というはタライと呼ぶ野猫で、中橋文相好物のタヌキ(これも北支那や黒竜州に産す)でない。故に支那訳経の飛狸、著翅狸はコルゴの英名フライイング・キャット、飛猫に合う。上にも述べた通り、至極怪しい獣でインドにも産すれば(バルフォールの『印度事彙』二)いよいよ仏典の飛狸はコルゴと考定さる。さて『僧伽羅刹所集経』一と二に有翅飛鬼、また羅刹有翅とあり、ハーバート・スペンセルが欧州で天魔に翅を画くは、蝙蝠を怪獣とせるに基づくといえるごとく、インドの羅刹鬼に翅ありとするは幾分蝙蝠に象ったるべきも、右に引いた経文で見ると、多分はコルゴに根源すというべし。邦俗いわゆる天狗が多少仏経の有翅飛鬼より生ぜるは馬琴の『烹雑記』に説く所、理あり。されば天狗は系図上コルゴの孫だ。何に致せ、古来学者を閉口させた平猴をコルゴと定めたは、予の卓見と大天狗の鼻を蠢かす。
また優陀摩仙が一たび神足を失して、水陸到る処物の声に正念を擾されたちゅう譚から出たらしいは、この辺で熊野の神が、田辺町より三里足らずの富田の海辺に鎮坐し掛かると、波の音が喧しい、それを厭うて山へ上ると松籟絶えず聞えるので「波の音聞かずがための山籠り、苦は色かへて松風の声」