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じゅうはちじのおんがくよく
十八時の音楽浴
海野 十三
線上閱讀海野 十三《十八時の音楽浴(じゅうはちじのおんがくよく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 103,941 字 · 210 頁
まっさきに夫人がそれに気がついた。彼女の紅をさしたしなやかな指が我と我が円き喉をしめつけた。
「ああッ、毒ガスだ。なぜわたしまで殺すのです。ううーッ、ここを開け――開けて下さい」
灰白色の毒ガスはプスと低い音をたてて、床の上を匍い、霧のように渦をまいて、だんだんと高く舞いのぼってゆくのであった。夫人の喉笛あたりが、みるみる真紅になっていった。細い五本の指も赤く染まっていった。そしてその赤い雫は胸の白い煉絹の上にまで飛び散っていった。夫人は蒼白な顔をして荒々しい呼吸に全身を鞴のようにはずませていた。
博士コハクは灰白色の毒ガスの中に、まるで塑像のように立っていた。夫人の苦しむ姿も目に入らぬようであった。なにかしきりと考えこんでいるようにも見えた。
が、突然歩きだした。室内をクルクルと栗鼠のように走りだした。そして四方の壁の表をしきりと探しているふうに見えた。
この室内の光景は、外部からもテレビ受影機をとおして手に取るように見えた。一方の壁付にミルキ夫人が苦悶している。博士コハクは狂人のようにクルクル走りつづけている。
テレビ受影機をジッと覗きこんでいるのはミルキ閣下と女大臣アサリ女史だった。